
それは或る日の水瀬家の夕餉の一齣。
『ごちそうさまでした』
「ごちそうさまー。秋子さんおいしかったよー」
「今日も、だろ?」
「うぐぅ。祐一君のいじわる。だっておいしいんだもん」
「人の善意にすがりすぎだ」
「いいのよ。食事は大勢の方が楽しいもの」
「秋子さん・・・」
「今日の食後のデザートはたいやきよ」
「わーい。たいやきだー」
「うぐぅ。はしゃぎすぎだ」
「あゆちゃん、祐一はほっといて早く食べよ〜」
「冷めないうちにどうぞ。今日のたいやきは特製なのよ」
いつものように穏やかな笑みを浮かべる秋子さん。
その瞬間、俺の名雪の目が合った。そして、無言で頷き合う。
「明日食い逃げしなくても済むように俺の分を分けてやる」
「あゆちゃん、わたしの分もどう?おなか一杯になっちゃって」
「え?本当にボクにくれるの?」
「ああ、だから俺の気が変わらないうちに食え」
「わーい。たいやきが3匹だー」
「良かったわねあゆちゃん」
「さあ、一気にかぶりついてくれ」
「うんっ。(がぷっ)」
ふっ。単純なやつ。名雪は顔を背けていた。
「うっ、うぐっ」
「どうした?おいしすぎて言葉もでないか?」
「うぐぅ・・・」
「どうあゆちゃん?餡子の代わりに手作りのジャムを入れてみたのだけど」
「おいしいよな?もちろん」
「うぐぅ。おいしいです・・・・・・」
「良かったわ。みんな中々ジャムを食べてくれないから工夫してみたのよ。
あゆちゃんが喜んで食べてくれるならまた作ろうかしら?」
「良かったな、あゆあゆ」
「うぐぅ。あゆあゆじゃない・・・」
・・・そろそろ潮時だな。
「さてと、俺は宿題をしないとな」
「わたしはもう寝るね〜」
俺と名雪は同じタイミングで席を立った。
「さあ、残りも冷めないうちにどうぞ」
「うん・・・・・・」
二階に向かう俺たちの背後から一際高い「うぐぅ」の声が聞こえたのは間もなくだった。
俺と名雪はその場で深々と合掌をしたのであった。
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